dechi

fictions

100日チャレンジ

006.平穏

8時のアラーム。飛び跳ねて起きると、脳だけが遅れてきて、頭蓋骨の内側に激突した。真っ先に携帯の履歴を見て、それから自分の格好を確かめる。背広は脱いでいた。よし、おおかた問題はなさそうだ。地動説を唱えたくなる程の二日酔い以外は。

005.目覚めと窓

窓から信号待ちの車や高速バス、背広で自転車に乗った若い男が見える。この時間は町が目覚める時間だ。その度に、自分だけがまだ眠っている錯覚を覚える。

004.明け方に発つ

舗道は濡れていたが雨は止んでいた。市役所は朝焼けに斜めに照らされていた。 いつものように神社へ行き「今までありがとうございました」と手を合わせた。珍しく、誰かのお供えものを見つけた。

003.夜の神社

この大通りは街灯が続いており、深夜の散歩にうってつけだった。 大抵は人とすれ違っても、互いに干渉しないことが暗黙の了解だったのだが、今日は妙な男が親切げに「こんばんわ。冷えますね」なんて言ってきて、変な気持ちになり、いつもより遠くまで歩いて…

002.待合室にて

隣の席の子供が言った。「話し掛けてもいいですか」 携帯を上着に入れながら「はい。何でしょう」と答えると、彼は「人の生まれ変わりについて」と切り出した。

001.牛の描かれた絵

先生は言った「この絵を見て、皆さんが感じたことを言ってください。」 私は他の子達と同じように、黙ってその絵を見ていた。道の上に牛がいる絵だ。牛は遠くを向いていて、その先には空以外に何も無い。